こんにちは。せいのちさとです。
このニュースレターでは、最近の制作についてや、マニアックな制作の裏側についてなどをお伝えしていきます。気になるところから読んでみてくださいね。
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特集「絵を描くとは判断を積み重ねること」
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※個展準備の時間を捻出するため、「ものづくりコラム」の連載はしばらくお休みさせていただきます。
特集「絵を描くとは判断を積み重ねること」
特集は、いま最も熱いトピックを制作現場からお伝えするコーナーです。
早いもので、8月末の個展まで2週間を切ってしまいました。締め切りが近づくとつい焦ってしまうものですが、こんなときこそ平常心が大切。淡々とやるよう、自分に言い聞かせる毎日です。
残り時間が少なくなってきたせいもあって、1日を有効活用するための仕事術を試行錯誤しています。このところ、起床後4時間は最も難しいことを、その後はある程度思考が停止していてもできる単純作業などをしています。
ここで「最も難しいこと」とは何かを考えてみました。マスキングをすること、絵の具でムラなく塗ること、烏口を使って綺麗な線を引くこと・・・。こういった技術力が必要とされる作業も確かに難しく、集中力が必要です。しかし、脳が一番元気な時にやるべき難しい仕事、それは「判断」をすることではないか、と思い当たりました。
アイデアを考えること、下描きを描くこと、配色を考えること、細かい描写をすること。これらの作業の中には、たくさんの「判断」が含まれます。絵とはいわば判断の積み重ねによってできたものなのだと改めて気づきました。今回は個展の展示作品を制作する中で、どんな判断が行われているのか、振り返ってみたいと思います。
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こちらは今回の展示作品に登場する、蝶の模様を描写しているところです。転写をしたあと、いったん練りゴムで線を薄くしてから、資料を見ながら形を整えていきます。
転写された線を鉛筆でなぞるのか、それとも色鉛筆でなぞるのか、こういったことを資料を見ながら判断していきます。思考停止したまま全て鉛筆でなぞってしまい、出来上がりに不必要な鉛筆の線を残してしまった、苦い過去があるからです。
下の写真は、その後さらに描き進めて、蝶を1頭ずつ描いているところです。どんなモチーフにも言えることですが、「実際の蝶にはあるけれど、あまり描かない方がいい部分」というものがあります。
全てを描いたつもりなのに、本物の印象とは違ったものになってしまうということはよくあります。人間はフォーカスしたところを強く知覚するらしく、モチーフそのものをパッと見たときの印象と、よく観察して描いた絵がかけ離れてしまう、ということは、絵を描く人なら経験したことがあるはずです。
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こちらはまた別の作品の下図です。トケイソウと、トケイソウに卵を産みつける蝶や幼虫を描いています。
この作品はあまり単純化しすぎず、比較的リアルな描写を入れたいと思っていました。それでもある程度、リアルではなくグラフィカルにしたい。どれくらいリアルさを残し、どれくらいデフォルメするのか、非常に悩みました。結果、細部はリアルに描くものの、花や葉、蝶はすべて正面を向いている構図にしています。リアルな要素とグラフィカルな要素、このふたつのバランスを考えることも大切な判断です。
左上部の葉の場所を何度も消して描き直した跡があります。元々あまり器用な方ではないので、最初に描いたものがそのまま使える状態になることは稀です。一度行った判断によってアウトプットされたものを、もう一度判断し直して修正していく。私の下図制作はこの修正の連続によって成り立っています。
青虫が葉を食べているところです。最初は葉の上にくっついているだけの状態を描いていたのですが、以前家のベランダに置いてある鉢植えにアゲハの幼虫がいて、一心不乱に葉を食べている様子がなんとも可愛らしく、それを思い出して描き直しました。この判断のおかげでこの絵には可愛らしさという情報が加わりました。
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こちらもまた別の作品の途中経過です。たくさんの赤い実に囲まれて、美味しそうに実を食べる、鳩のいきいきとした感じを表現したいと考えています。この作品では、トケイソウの絵と違い、かなりグラフィカルに描きたいと思い、構想を練りました。
グラフィカルにするために私がよく使うのは、モチーフを重ならないようにパズルのように配置する方法です。たとえば、下の作品は葉を重ならないように配置することで、整理された印象になるように仕上げています。
しかし今回の作品では、実をいっさい重ならないように配置すると、枠の中に描ける赤い実の数がだいぶ少なくなってしまいます。たくさんの赤い実に囲まれているようにしたいので、非常に悩みました。
最終的にこんなルールで描くことにしました。
枝同士は重ならないようにする。
同じ枝になっている実同士は重なってもよい。
枠線に細い枝や実が接触している状態にし、はみ出したり重なったりしないようにする。
鳩と枝・実は重なってもよい。
このルールのおかげで、赤い実がたくさんなっている様子と、グラフィカルな印象を両立させることができました。ここにもルールをつくるためのさまざまな判断があります。苦戦はしましたが、必ずどこかに道はあるものです。
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仕事術を考えていたら、いつの間にか制作における判断について考える機会となりました。他の人の絵を見るときも、なんとなく流してしまうのではなく、「ああ、ここにこの色を置いたのはここを強調するためなのだな」「この構図にすることでここに視線を誘導したいのだな」という見方が生まれてきています。当たり前のようですが、自分にとっては新鮮な気づきでした。
作り手の無数の判断の行き着くところに作品があります。みなさんもそこに想いを馳せて絵を見てみてはいかがでしょうか。
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【個展のお知らせ】
東京都品川区の「o-i STUDIO」にて、個展を開催します。「o-i STUDIO」は三菱鉛筆株式会社さんの運営する、ギャラリー・ワークショップスペースです。
【期間】
2026年8月27日(木)-30(日)/ 9月3日(木)-6(日)
木・金…14:00-20:00、土・日…10:00-16:00
個展の準備にフォーカスした過去記事も、併せてチェックしてみてください。
いよいよ2週間後に迫った個展。すべて2026年の4月以降に描かれた新作です。作品展示は今回限りとなる予定ですので、ぜひ原画を見にきてくださいね。
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ここまで読んでくださり、どうもありがとうございました。
それではまた2週間後にお会いしましょう。クリエイティブで素晴らしい毎日をお過ごしください。
















